PVC法は、SEMで電位コントラストを観察し、故障候補を絞り込む解析手法です。PVCはPassive Voltage Contrastの略で、電子線を当てた試料の帯電状態が画像の明暗に現れることを利用します。半導体の配線やコンタクトの導通状態を比較する方法であり、発熱を検出する手法や薬品で色を付ける手法とは原理が異なります。
PVC法で観察する電位コントラスト
SEM(走査電子顕微鏡)は、試料に電子線を走査し、そこから得られる信号で画像を作ります。入射した電子の一部は試料から放出され、一部は試料内へ入り、接地経路へ流れます。観察条件と試料の電気的な接続によっては、表面に電荷が蓄積します。
その結果生じた表面電位は、二次電子の放出や検出に影響します。導通経路が異なる部分では帯電の仕方が変わり、SEM画像のコントラストの違いとして現れることがあります。この違いを正常な構造や設計情報と比較し、電気的な異常を持つ位置を探します。
PVCの原理を理解する3段階
- 電子線照射で、電子の放出・吸収・電荷の蓄積が起こる。
- 接地や配線のつながり方により、表面電位が異なる。
- 二次電子信号の差を画像で比較し、故障の候補を絞る。
断線やリークの候補を調べる
配線が正常につながっている部分と、断線して浮いた状態の部分では、電荷の逃げる経路が異なります。その違いがコントラストに表れる条件では、断線候補の位置を探せます。また、絶縁されるべき部分にリーク経路があると、正常な構造と異なる電位状態を示すことがあります。
東芝ナノアナリシスは、配線の断線や、ゲート酸化膜がリークするMOSトランジスタの特定例を紹介しています。このような例はPVCの用途を示しますが、すべての故障を画像一枚で確定できるという意味ではありません。電気測定の結果と、実際に露出・観察できる構造を対応させる必要があります。
解析で確認する流れ
最初に、故障の電気的な症状と、調べる配線・素子の位置を整理します。次に、対象層を観察できるよう、必要に応じて研磨や層の除去などの試料準備を行います。準備中に導通経路を変えたり、別の損傷を作ったりすると、観察したコントラストの解釈が難しくなります。
SEMでは照射条件、試料の接地、表面状態などをそろえ、正常部と異常候補を比較します。明暗の差を見つけたら、レイアウトや電気測定との整合を確認し、必要に応じて断面観察などで物理的な原因を調べます。故障候補の検出と、断線・異物・膜損傷などの原因確定を分けて進めることが大切です。
ほかの故障解析との違い
| 手法 | 主に観察するもの | PVCとの区別 |
|---|---|---|
| PVC | 電子線照射時の電位差に由来するSEM信号 | 導通・帯電の違いを利用する |
| 発熱解析 | 電流を流した際の温度分布や熱応答 | 熱を測る手法で、PVCの原理ではない |
| 発光解析 | 電気的ストレス等に伴う微弱な発光 | 光を検出する手法で、SEM二次電子像とは異なる |
| 断面・形状観察 | 配線や膜の形状、界面、異物 | 電気的な故障候補と構造上の原因を対応させる |
明るい・暗いだけで故障を断定しない
PVC像の明暗は観察条件と試料構造に依存します。「明るい箇所は必ず短絡」「暗い箇所は必ず断線」と一律には判定できません。電子線条件や接地状態、表面の汚染や凹凸でも信号が変わるため、比較する構造と測定条件を確認します。
多層配線の内部がそのまま見える手法でもありません。どの層を露出させたか、観察点と故障箇所の間にどのような電気的つながりがあるかを踏まえて解釈します。外部から電圧や動作信号を与える電位コントラスト法もあり、受動的なPVCと試料条件を混同しないことが必要です。
解析結果を確認するチェック項目
- 正常部との比較条件と、試料の接地状態を記録する。
- 観察している層と、レイアウト上の導通経路を対応させる。
- 試料準備による損傷や接続の変化を検討する。
- 電気測定や構造観察と合わせて故障原因を判断する。
まとめ
PVC法は、電子線照射による帯電と二次電子信号の違いを利用する半導体故障解析です。断線やリークなどに伴う導通経路の違いを手がかりに、故障候補を特定します。熱や化学的な着色を測る方法とは区別し、試料準備、観察条件、電気測定を組み合わせて結果を評価します。
参考資料
測定原理と用途の確認に用いた一次資料です。SEMの観察条件、測定対象の構造と試料調製は、使用する装置と評価手順の資料で確認してください。



