近年、スマートフォンや自動車、家電製品など、私たちの身の回りにあるあらゆるデバイスで「半導体」の重要性が高まっています。特に大手半導体メーカーは、世界的な技術革新を牽引しながら、安定した経営基盤と豊富なキャリア機会を提供しているため、就職先としても注目度が高いです。
しかし、競合が多く、採用プロセスも厳しいと言われるのが半導体メーカーへの就職。大学の研究内容や専門知識をどのようにアピールすればいいのか、エントリーシートや履歴書で差をつける方法はあるのか、多くの学生が悩むポイントがあります。
本記事では、そんな不安や疑問を解消するため、大手半導体メーカーの採用プロセスの対策法、内定をもらうための具体的な方法を幅広くご紹介します。
国内の半導体関連企業について
まず、半導体の企業といっても大きく分けて二種類あります。
- 半導体を製造するメーカー
- 半導体装置、材料を製造するメーカー
半導体製造メーカー
半導体製造メーカーには、以下のような企業があります。
企業名 | 売上高 (2023年度) | 事業領域 |
---|---|---|
キオクシア株式会社 | 約1兆円(推定) | NAND型フラッシュメモリの開発・製造・販売 |
ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社 | 約1.1兆円(推定) | CMOSイメージセンサーの開発・製造・販売 |
ルネサスエレクトロニクス株式会社 | 約7,000億円(推定) | マイコン、アナログ&パワーデバイス、システムLSIの開発・製造・販売 |
ローム株式会社 | 約3,800億円(推定) | LSI、ディスクリート半導体、モジュール製品の開発・製造・販売 |
富士電機株式会社 | 約9,000億円(推定) | パワー半導体、制御機器、電子デバイスの開発・製造・販売 |
半導体製造装置、材料メーカー
日本の主要な半導体装置・材料メーカー5社の2023年度の売上高と事業領域を以下の表にまとめました。
企業名 | 売上高 (2023年度) | 事業領域 |
---|---|---|
東京エレクトロン株式会社 | 約2.5兆円 | 半導体製造装置の開発・製造・販売。エッチング装置や成膜装置に強みを持つ。 |
アドバンテスト株式会社 | 約4,000億円 | 半導体テスト装置の開発・製造・販売。メモリテストシステムやロジックテストシステムに強みを持つ。 |
ディスコ株式会社 | 約2,000億円 | 精密加工装置の製造・販売。シリコンウエハーの研削やチップの切り分け技術に強みを持つ。 |
信越化学工業株式会社 | 約2.1兆円 | シリコンウエハーの製造・販売で世界トップシェアを持つ。その他、フォトレジストなどの半導体材料も手掛ける。 |
富士フイルム株式会社 | 約2.5兆円 | 半導体製造に必要なフォトレジストやスラリーなどの特殊材料の開発・製造・販売。 |
理系職種の採用プロセス
ここでは、一般的な採用フローの解説と各フローのポイントについて解説します。
企業によってステップが変わることはありますが
一般的には、下記の採用フローで進みます。
指定の方法でWEBエントリーを行います。
エントリーすることで、会社説明会の案内や書類選考の案内を受け取れるようになります。
会社説明会に参加すると、企業の人事の方や先輩社員から
会社説明や自分が知りたい情報を質問する機会があります。
また、企業によっては会社説明会に参加していないと応募できない場合もあるので
行きたい企業がある場合は必ず会社説明会に参加しましょう。
応募方法には大きく分けて学校推薦と自由応募があります。
学校推薦を使うと、内定をもらえる確率が高くなる傾向があります。
選考を免除できる場合もあるので、第一志望の企業に学校推薦が使える場合はおすすめです。
ただし、学校推薦を使い内定をもらうと原則内定辞退ができないので
学校推薦を使うかどうかは慎重に考える必要があります。
能力検査と性格検査があり、企業とのミスマッチを防ぐために行われます。
理系の場合は、自己PRや志望動機の他に研究内容も記載します。
自分の研究分野について詳しくない人に理解してもらえるように
端的かつ分かりやすい言葉でまとめる必要があるので、
所属している研究室の教授にレビューしてもらいましょう。
一次面接は人事部の新卒採用担当者、二次面接から志望企業の技術職の社員が
面接官として参加することが多いです。
履歴書・エントリーシートで気を付けるポイント
就職活動における履歴書やエントリーシートは採用担当者にとって応募者の第一印象を決定づける重要な書類であるため、以下の点に注意して作成することが大切です。
- 自身の強みや経験を、具体的な数字や事実を用いて簡潔に記述し、採用担当者に伝わりやすくする。
- 自己分析を通じて、自分の価値観やキャリア目標を明確にし、志望動機や強みを論理的にアピールする。
- 誤字脱字や記載漏れ
履歴書やエントリーシートには限られた文字数で自分を効果的にアピールする必要があり、曖昧な表現や冗長な説明は避け、具体的かつ簡潔な言葉で自身の強みや経験を伝えましょう。
これは採用担当者が短時間で多くの書類に目を通すため、わかりやすく端的に記述することで採用担当者に理解してもらいやすいためです。例えば、学業での成果や課外活動でのリーダー経験など、数字や事実を用いて論理的にアピールすることが有効です。
具体例としては「卒業研究で〇〇という研究をしており、〇〇の特性を30%向上させる成果を達成しました」という記述が挙げられます。
- 研究内容
- 目的/課題
- 目的や課題を解決するためにどのようにアプローチしたか
- どのような成果が得られたのか
などを具体的かつ決められた文字数になるよう記述しましょう。
技術面接では上記の内容をもとに質問をされるので、面接では明確に答えられるよう準備しておく必要があります。
また、特に気をつけてほしいポイントは履歴書やエントリーシートの誤字脱字や記載漏れです。
大手企業となると採用担当者は何千、何万人の書類選考を行います。そのため、履歴書に誤字や脱字があると「重要な書類でもミスをする人」という印象を持たれ、高確率で落とされてしまいます。
必ず見直しを行い、第三者のチェックを受けましょう。
面接時に気を付けるポイント
自然なコミュニケーションを心がける
「質問内容に対して的確に回答できるか」が見られるので
聞かれた内容に対して、簡潔に結論から答えつつ具体的な内容や補足説明をするようにしましょう。
また、面接官の目を見て話す、ハキハキと会話することを心掛けましょう。
企業研究を徹底する
応募企業の事業内容や業界動向を事前に調べ、志望動機や質問への回答に具体性を持たせましょう。「貴社の〇〇事業に共感し、自分のスキルを活かしたい」というように、企業理解度を示すことが重要です。
第一印象を意識する
清潔感のある服装や姿勢、適切な言葉遣いを心がけましょう。スーツやネクタイの整え、笑顔での挨拶など、基本的なマナーが好印象につながります。
理系学生特有のポイント
- 研究内容をわかりやすく伝える
理系学生にとって、研究内容は大きなアピールポイントです。ただし、専門用語を多用せず、誰にでも理解できるよう簡潔に説明することが重要です。例えば、「新素材の効率を〇〇%向上させた成果を達成しました」という具体的な数字を使った説明が効果的です。 - 研究の応用可能性をアピールする
自身の研究が企業の技術や事業にどのように貢献できるかを示しましょう。「私の研究で培った〇〇の技術は、貴社の〇〇事業で活かせると考えています」といった形で、志望企業への適合性を強調すると良いでしょう。 - 技術面接への準備
技術面接では研究内容に深く踏み込んだ質問を受けることが多いため、研究の目的やアプローチ、得られた成果、課題を明確に説明できるように準備しましょう。また、関連する知識や技術についても復習しておくことが大切です。
理系学生におすすめの就職活動に向けた準備
インターンシップに参加する
インターンシップは、企業の業務内容や職場の雰囲気を直接体験できる貴重な機会です。特に理系学生の場合、自身の専門性がどのように実務に活かされるのかを知る良いチャンスとなります。企業が求めるスキルや人材像を理解することで、履歴書や面接でのアピールポイントを具体的にすることができます。
- インターンシップ参加者を対象とした優先選考や特別枠がある企業も多く、採用のチャンスが広がる。
- 実際の業務内容や企業の文化を体験することで、志望企業の特徴を理解できる。
- 面接やエントリーシートで具体的なエピソードとしてアピールできるようになる。
OB・OG訪問に参加する
OB・OG訪問は、先輩社員から実際の仕事内容や企業のリアルな雰囲気を聞ける貴重な機会です。同じ理系のバックグラウンドを持つ先輩に相談することで、自身のキャリア選択の参考になる情報を得られます。また、面接時の具体的な質問や志望動機にも活かせます。
- 選考に関する具体的なアドバイスを受けることができる。
- 実際に働く先輩から、会社の文化や職場の雰囲気、業務内容などリアルな話を聞くことができる。
理系の学生に特化した就職支援サービスを活用する
理系学生向けの就職支援サービスでは、専門性を活かした求人情報や就職活動のアドバイスを受けることができます。
主なサービスの特徴としては
- 理系学生向けの求人やインターン情報
- 専門分野や研究内容に基づいた履歴書やエントリーシートの書き方指導
- 模擬面接やキャリア相談など、就職活動全般のサポートを提供。
などがあります。
まとめ
大手半導体メーカーへの就職には、企業理解を深めたうえで、インターンシップやOB・OG訪問を活用し、具体的な志望動機や自己PRを準備することが重要です。履歴書やエントリーシートでは、理系学生ならではの専門性を簡潔かつ分かりやすく伝えることがポイントです。採用プロセスをしっかり対策し、自分の強みを最大限にアピールしましょう。